中国では1979年に政府の人口抑制計画による「一人っ子政策」が実施されてから、一人っ子の将来に対する親の期待が高まり、これを背景に、都市部では、受験戦争が年々厳しさを増しています。
 実際、最近では中国の一流企業に就職する学生のほとんどが、国家重点大学(難易度の高い大学)の卒業生という現状があります。幼稚園から大学まで約6万人民元(約78万円)もかかると言われる高額な教育費。一般市民の所得水準からみてもこれは相当な負担ですが、たった1人の子供に教育で失敗させたくないという親の心情がうかがえます。

 市内の中学校に通うA君(13才)もこのような親の期待を一身に受け、毎日勉強にいそしんでいる1人です。彼の1日のスケジュールは右のとおりで、教育偏重を裏付ける日課となっています。
 彼の話によると、「今の悩みはテレビをみたり、ゲームをしたり、友達とサッカーをしたりする自由な時間がもてないこと。」一方で、「将来の大学進学に対する不安」や「親の期待に応えたいので、試験で高成績を取るために勉強漬けの毎日でも仕方がない」など、相矛盾する子供心がうかがえます。
 民間調査機関の調べでは、小中学生の平均睡眠時間は、5人に1人が7時間以下と政府が定める標準9時間を下回っており、こうした実態も踏まえ、中国政府は最近、教育偏重の現状見直しを全国の学校に通知しました。
 それによると「学校による参考書の統一購入、休日の補習、無用な競争心をあおる試験の成績順位の張り出し等禁止」といった内容が盛り込まれています。このような政府の動きは、逆に、教育熱心な親達の学校教育だけでは不安だという感情を煽り、有名家庭教師センターに家庭教師の派遣を依頼したり、書店に参考書を買い求めたりする家庭が増えています。
 授業や宿題を減少させ、その分道徳や感性の全面的発展を促したい中国政府と、受験戦争に勝ち残れるよう子供にハッパをかける親の間に挟まれ、当の子供達が一番困惑しているのかも知れません。
ところで、中国の子供たちはこのような受験戦争に勝ち抜き、将来にどのような希望を抱いているのでしょうか。
 前述のA君の場合は、特に英語を勉強して、将来給与面で待遇の良い中国国内の外資系企業に就職するか、海外に留学した後現地有名企業に就職したいという願望を胸に抱いています。
 全国的にもこのような考えを持つ学生は、比較的多いとされており、経済のグローバル化やインターネットの急速な普及といった情勢も手伝い、英語教育においても、会話重視の方向で授業カリキュラムが見直されつつあります。
 また、当地では、日本語教育で全国的にも有名な大連外国語学院において、国内各地から集まった多数の中国学生が日本語習得に励んでおり、卒業後は市内の日系企業に就職するケースもよく見受けられます。
 中国のWTO加盟が確実になり、今後中国経済もグローバルスタンダードの荒波にのまれ、世界各国から外資企業の投資が予想されるなか、このような将来に目的を持ち受験戦争を勝ち抜くために努力している学生達がビジネスの世界において大いに活躍できる場もますます増えてくるものと思われます。



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