1. 香港名物の2階建て路面電車
 香港を紹介する雑誌やテレビ番組には必ずと言っていいほど登場する香港トラム。日本では見られない2階建てというスタイル、そしてその派手な車体塗装は、観光名物のひとつとなっています。路線は、香港島の東西を結ぶ本線と住宅地を循環する支線から構成されており、住民の足として、観光客にも人気の乗り物として、活躍中です。
 トラムは後ろ乗りの前降りで、運賃は後払い。おつりはもらえませんが全線一律2香港ドル(約30円)の低料金と、約200メートル毎にある停留所の使い易さが魅力です。人や車で混みあう繁華街を2階席から眺めていると、探していた地名や店を発見することもあり、香港探索にも役立ちます。タクシーだと嫌がられる近場への移動にも、これまた便利なのです。

2. 走る広告塔
 緑の車体が本来の姿ですが、広告で全体塗装された派手な車両が半数近くあり、見ているだけでも退屈しません。地元企業だけでなく、日本企業の広告も時折見かけます。住宅地からビジネス街、そして商業地区へと目抜き通りを走る香港トラムの広告媒体としての価値は高いといえます。

値上げで客ばなれ?


ハデな広告で人目を引くトラム
3. トラム運賃の値上げ
 人々の足として、宣伝効果の高い広告塔として、香港中で活躍しているトラムですが、現在は運営会社の経営悪化という問題に直面しています。その結果、運賃値上げの申請が行われており、20%の値上げが見込まれています。
経営不振は、バス会社との競争激化を背景とした利用客の減少によるもの。幹線道路を走るトラムは交通渋滞の影響を受けやすいうえ、エアコンのない老朽化した車両ばかりです。一方のバス会社は、エアコン付きの新規車両の大量投入に加えて、路線拡充などのサービス向上に努めており、このままではトラムの乗客離れを止めるのは難しい状況であるといえます。

4. 環境対策の切り札
 経営効率および市場経済の視点に立てば、トラムの衰退はやむを得ないのかもしれません。事実、日本の路面電車も衰退傾向にあります。しかしながら、環境先進国である欧州では、排気ガスの出ない路面電車を見直す気運が高まっており、廃止路線の復活や新路線の建設が進められています。

雑踏の中の呉越同舟、バスとトラム
つまり、環境保護の観点からは、トラムの優位性が見いだされるのです。日本ではあまり知られていませんが、車の排気ガスによる香港の大気汚染は深刻であり、時には外出を控えるよう警告が出されることもあります。新聞やテレビの天気予報では、空気汚染指数なる数値も報じられています。汚染の激しい都心部への車の乗り入れ制限実施など、行政が環境保護対策に本気で臨む時、車に代わる交通手段としてのトラムの存在価値が高まるでしょう。
 香港トラムの経営環境は厳しいといえますが、「環境に優しいトラム」として、その存続および発展を期待しています。


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