バンコク郊外や田舎に行けば、自転車に乗っている人をたまに見かけますが、不思議なことに市内では、自転車に乗っている人はほとんどいません。
 そこで、その理由をタイ人に聞いてみましたので、タイ人気質を表す2つの言葉にあてはめてまとめてみました。
 タイには豊かな自然があり、衣食住について比較的心配のない国です。したがって、タイ人は何をするにせよ「サヌック〜楽しい、面白い」で「サバーイ〜気分爽快、元気」であることを大切にします。そのタイ人にとって自転車に乗ることは………

「サヌック〜楽しい、面白い」ことではありません。
 バンコクには、自転車専用道路がほとんどありません。そこで、歩道を通らざるを得ないわけですが、名物の屋台が所狭しと並んでいたりで、自転車での往来は至難の業です。車道はと言えば、自動車がわずかな隙間を狙って車線変更を繰り返しており、さらにその隙間を縫うように、オートバイが駆抜けて行くわけですから、危ないことこの上ありません。


 また、日本のように、至る所に横断歩道や歩行者用の信号があるわけではありません。あるのは歩道橋くらいです。しかし、自転車を持って登るわけにも行かず、それではと横断を試みれば、幹線道路の多くには中央分離帯があり、自転車の行く手を阻むかのように立ちはだかっています。
 このように、自転車にとってバンコクの交通環境は、危険と障害物がいっぱいで、決して「サヌック」なことではありません。

バンコク市内の風景。
自転車は見つかりましたか? 
 「サバーイ〜気分爽快,元気」なことではありません。
 熱帯モンスーン気候に属するバンコクは、3つの季節、「夏」「暑い夏」「とても暑い夏」があると言われるほど、1年中夏が続きます。季節によっては、日本の秋をイメージするような朝夕もありますが、日中は常に「夏」。時には、気温40度を越える「酷暑の日」もあります。
 また、世界最悪とも言われる交通渋滞の中、吐き出される自動車の排気ガスはあたり一面によどみ、肺を痛めつけます。
「気分爽快」であることを大切にするタイの人々にとって、このような暑さと大気汚染のなかで自転車に乗ることは、その対極にある行為といえ、決して「サバーイ」なことではありません。
 以上が自転車に乗らない主な理由ですが、その他に自転車が盗難にあう危険性が高いこと、安価で速い交通手段、例えば、トゥク・トゥクやオートバイがあること等がありました。

 タイでも、数年前までは、エコロジーの観点から、「自転車に乗りましょう」キャンペーンをラジオでやっていましたが、最近はそれも聞かれなくなりました。経済危機で自動車販売台数が激減するなか、「自転車に乗りましょう」とは、声高に言えなくなったのかも知れません。
大気汚染は深刻な社会問題(バンコク市内)
 
 交通渋滞と大気汚染の緩和のため、もっと自転車に乗るべきなのでしょうが、タイ人気質を表すもう一つの言葉「マイ・ぺン・ライ〜気にしない」で、交通渋滞と排気ガスのなか、暑いバンコクの一日は今日も暮れていきます。


■ BACK ■